2013年09月27日

雑多なこと

宮川教授の日本版テニュアトラックについて考えてみた

どーも、空いつかです。今回はたまには真面目(?)な内容を…(長めです)

藤田保健衛生大学の宮川剛教授による「日本版テニュアトラック制度」の提案が日本分子生物学会2013年年会組織委員会の「日本の科学を考える」サイトに掲載されています(2013-09-25付:安定性と競争性を担保する 日本版テニュアトラック制度の提案)。この提案では常勤・非常勤研究職にある大きな格差を原因とする、日本の研究界におけるマイナス点を端緒として、日本版テニュアトラック制度について述べられています。興味深く読みましたので、少しこれについて考えてみました。

まず、日本の研究界が抱える大きなマイナス点が2点挙げられています。それらは、1)研究力を持つ若手が参入しなくなる、2)「競争」のために生産性が削がれている、とのこと。これらの問題は任期付きを経験した方なら実感できるのではないでしょうか。少なくともソライツは自分が経験してきた任期付きライフを後輩に胸を張って勧めることはできませんし、生産性が削がれているという問題に関しては、ここでも書いた「任期でウチドメ!長期研究」ということが日常的に起こっています。また、『激しい「競争」にさらされているのは、主に非常勤の研究者でしかないということもあります』と書かれている通り、「アカデミックの歩き方(9)〜流動化の現実?」に取り上げたような状況があります。これらの問題に対処するための人事制度として「実績・評価で待遇が変化する安定したポジション(日本版テニュアトラック)」という提案がなされています。

提案では、
博士号を取得し、ある期間に一定の実績を上げることができた研究者は、原則的に任期なし常勤ポジション(テニュア)が与えられるような仕組みにすることです
という大胆な発想が述べられています。提案のキモなので詳細はぜひ本文を読んでいただきたいのですが、失礼を承知で乱暴にまとめるなら、「研究費配分機関(JSTなど)に常勤職員として所属し、そこから受け入れ先研究機関に派遣される」という、大枠では派遣社員のような感じでしょうか? 『テニュア研究者自身がより良い条件を出してくれるPIを自分でみつけます』というところが派遣社員とは異なるように思えます(見つからない場合は派遣元が斡旋とのこと)が、このような制度であれば、派遣先で任期上限が来てもサイアク失業はしないわけで、少しは安心して(?)任期付きを続けることができそうです。この制度が最適解かどうかはわかりませんが、この方式なら安定性と競争性が担保されるかも、と思えます。

ここまで長くなりましたが、ソライツが最も興味深く感じた点を挙げておきます。提案では付け足しのような形で書かれていますが、以下のような提案も出されています。
博士号取得者は何も研究そのものをやる必要はないわけで、研究をサポートするような技術員トラック、事務系トラックや、教育トラックというものに入ることもできるようにしておきます
これは「研究業界に関わっていたいけど、その周辺部の業務に携わりたい!」という考えを持つソライツのような研究者にとっては非常に興味深い内容に思えました。

ソライツは、研究のわかる技術職として開発を主な業務として行いたい!という希望があり、現在は幸運にもそのような職に就いていますが、たどり着くのに結局10年かかりました(実際はその10年で徐々に方向が定まったのですが)。現在の制度では研究職を目指してしまうと他業種(提案中での技術、事務、教育)に行くのは難しい印象があり、それに対して提案の制度があれば、若い方が多様なキャリアパスも考えられるのかなと思うと楽しくなります(^^)。学位を持ち現場での研究経験がある広報とかが誕生したら、最近話題の多いサイエンスコミュニケーション的にもきっと面白いんじゃないかと思います(現在そのような方がどの程度いるかわかりませんが…)。

提案の最後に
現在よりも研究者が研究にしっかり集中できるようにし、限られた資源が有効に使われるような仕組みに改善することが大切
と書かれています。それと同じようなことを現場で常に感じてきた末端の研究者として、このような取り組みが進めばいいなと思います。

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posted by 空いつか at 12:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑多なこと

2013年09月21日

任期付き、はじめてみる?(入門編)

アカデミックの歩き方 特別編〜修士・イン・アカデミア(2)

修士・イン・アカデミア(2)どーも、空いつかです。
ようやく涼しくなってきたので(自宅の)デスクに向かう時間が増えました。暑さ寒さも彼岸まで、ですね(^^)。

さて、今回は「修士でアカデミックに入るとき」について考えてみます。
ここでのアカデミックとは、ポスドクレベルの仕事に携わることのできるポジションを指します。前回、「修士の研究職という職位が存在する場合」と書きましたが、ソライツの経験ではそのようなポストが存在するのは、主にプロジェクト研究になるようです。

プロジェクト研究は短期間(3-5年程度)で成果を求められるという性質上、採用に関して現場で
必要と判断されれば、修士でも研究職相当で採用される可能性があります。この辺りは正規職員とは異なり、ある程度はプロジェクト責任者の裁量みたいです(これは現在でも変わらないと思います)。なお、国公立の大学や研究機関の正規職員(任期付きでも定年制でも)の場合、制度的に修士では研究職(という肩書き)に就けないことが多いようですし、その他の研究ポジション獲得において修士はアカデミックでは圧倒的に不利なので、下手をすると袋小路。そのため、「どーしても行ってみたい」とか「失うモノは何も無い」という位の覚悟はしておきたいですね(汗)。

給料は制度にもよりますが通常は博士よりも5-10%程度低くなります(ポジションで差が付いたり、研究員手当や年齢で差が付いたりします)が、20代という年齢で考えると比較的高めなので
若いうちならあまり気にならないでしょう。ソライツは修士卒、社会人4年目から某超大型プロジェクト(わかる人はわかる?)に雇われており、波瀾万丈で忘れられない(色々な意味で)刺激的な日々でした。アカデミックな内情を知る貴重な経験ができたと思っています。ちなみに「Dear my friends in Hokkaido」の仲間はこの時のチームメンバーです。

それなりに成果を出していけばその分野内で少しずつ足場が固まってくるという点では博士と変わらないので、努力と運(重要!)次第で生き延びることは可能です。ただ、学位が無いのは圧倒的に不利なので、早いうちに実績を積み学位取得を目指したいところです。

任期付き+学歴による圧倒的不利な状況、やはりいつでもセツジツなのでした。

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2013年09月18日

任期付き、はじめてみる?(入門編)

アカデミックの歩き方 特別編〜修士・イン・アカデミア(1)

修士・イン・アカデミア(1)どーも、空いつかです。
季節の変わり目と秋の花粉症ですっかり風邪気味です。仕事を休むほどしんどくはないのですが、ずっと微熱で身体が重いです…

さて、今回は「修士でアカデミック業界に入ったら?」について考えてみます。
最近は修士でアカデミック業界(研究職)というのはあまり無いケースだと思いますが、ソライツが若かりし頃(10年程前)には、分野によってはそれほど珍しくなかったように思います(もちろん全体から見ると少ないですが)。それだけに、修士でアカデミック業界に入ってしまうことについての情報は少ないのではないでしょうか。ここではソライツの経験に基づいて考えてみたいと思います。

余談ですが、アカデミック関係でも技術系(定年制職)なら修士卒でも採用枠を見かけるので、そちらは公務員として就職するのとあまり変わらない気がします。それはさておき、修士が研究系でアカデミック業界に入る場合ですが、まとめるなら「どーしてそんな不利なルートを選ぶのかがわからない」と言えます(汗)。大学教員はもちろん、独法系の研究員は学位を保持していることが採用条件に含まれていることが普通なので「制度的に定年制(研究)職員にはなれない」のです。

つまり、よほど特別なコネやらルートがない限り任期付き研究職としてのスタートとなります
(これは博士でも同じですが)。しかも、その任期付き研究職の中でも、修士の研究職という職位が存在するポストのみが選択可能です。例えば独法系研究機関であれば状況によりそのような職位が存在するようです。ただ、最近は学位の比重が大きく(さらに博士が余っているというのも理由かもしれませんが)、修士で就ける研究職をほとんど見かけません…

と、まぁ、安定志向だったソライツがなぜそんなルートを選んでしまったかはソライツ的人生の大いなる謎なのですが、次回は「修士でどうやってアカデミック業界に潜入するか」を検証してみたいと思います。当時と今ではアカデミック業界の(財政的な)基礎体力が全く異なるので現在に当てはまるかどうかはわかりませんが…

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2013年09月13日

任期付き、続けてます。

研究は競争なのだ(5)〜科研費の秋!

科研費の秋!どーも、空いつかです。
捜し物をして押し入れをあさったら、ダニまで出てきたらしくなんだか身体がかゆくなりました…押し入れバルサンが必要かなぁ…

ともかく、科研費(科学研究費助成事業)申請の季節ですね。
外部資金は科研費だけではありませんが、アカデミック業界で研究に携わる方々なら基本的に応募する(たぶん)と思いますので、秋の一大イベントであることは間違いないでしょう。食欲の秋、スポーツの秋、科研費の秋です!

今回の4コマにノスタルジー(?)を感じる人はおそらく研究歴10年以上じゃないでしょうか。当時は各自が申請書を印刷して、糊付け製本をした上で識別用に表紙の右上(だったかな)に色づけをするという作業が必要でした。若手研究枠は確か5-6部程度だったと思いますが、基盤研究枠は10部以上作ってたように記憶しています(基盤は出してないのでうろ覚え…)。タダでさえ締め切りギリギリなのにこの製本時間を考慮して時間配分を考えなければなりませんでした(?)。若い方は周りの先輩に聞いてみて下さいね。

その頃は、若手研究の対象者は35歳以下(だったと思う)で、ソライツはまだ20代、いつかは若手研究者という肩書きが外れるのかなぁとぼんやり思ってました(トオイメ)。気がつけば齢を重ね、そろそろ若手研究者と呼ばれることもなく…なると思ってたのですが、若手研究の対象者は年々拡大され、いつの間にやら39歳以下が対象になりました(このネタは別の話でも取り上げたいところ)。そんなわけで(一応)若手研究者という肩書きがずっと続いてます(^^;。

さて、科研費、平均採択率は30%程度ですが、ソライツのまわりでは割とみなさん持ってるんですよね。補助される期間は複数年(2-4年程度)なので、確率的には3年間で9割の人に当たるのかな…?とか思ったり。あ、ソライツの星取り表は聞かないで下さい(涙)。

そんなわけで科研費の秋。頑張りましょう。

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posted by 空いつか at 23:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 任期付き、続けてます。

2013年09月11日

任期付き、続けてます。

SIM☆文教・科学振興費!

SIM☆文教・科学振興費!どーも、空いつかです。
時季外れ(?)に蚊に刺されました。ソライツは体質なのか、できた赤斑が数週間消えません。ひたすらかゆみ止めを塗る日々なのです…

さて、今回は特に意味のないネタです。
ゲームと言えば最近のソライツはノベルゲーム(といっても読むだけのやつ)ぐらいしかしませんが、PCゲームと言えばシミュレーションゲームも面白いですよね。そこでふと思いついたのが、文教及び科学振興費シミュレーションです。予算配分と制度を考えつつ、国家の科学力を上げていくというマネージメント系のゲームはどうでしょう?(本当にあるわけではありません)

ちなみに平成25年度の一般会計における文教及び科学振興費は5兆3687億円(財務省資料:平成25年度予算特集2 文教及び科学振興費(PDF))。このうち約3/4が国立大学運営交付金を含む文教関係費(教育関係ってことかな)、残りの1兆3千億円が科学技術振興費となっています。

この予算特集など財務省資料は読みやすい文体で淡々と書かれているので、ざっと眺めてみるとどんな風に予算が振り分けられ、例えば国としてどの分野の科学技術に力を入れているのかが何となくわかります(アウトラインですが)。また、国税庁も学習用の資料を公開しているようです(例えば、文教及び科学振興費について)。

ともかく、国家予算をもとにした科学立国シミュレーション『Sim☆文教・科学振興費!』そんなゲーム、誰か作ってくれないかなぁ。案外面白いかも知れません(汗)。

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posted by 空いつか at 22:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 任期付き、続けてます。